第3章 蔵
翌朝、廉は腹の上の衝撃で目覚めた。
「主様ー!朝ですよー!!」
『……ん…』
うっすらと目を開けると、腹の上に黄色い物体が乗っかっていた。眼鏡を掛けていないせいでちゃんと見えていないが、これはたぶんこんのすけだろう。
「お早う御座います主様!朝餉の準備が出来ているそうですよ!」
『おはよー…朝餉!?』
「うわっ!!」
朝餉がもう出来ていると聞いて、私は勢い良く飛び起きた。その反動でこんのすけがコロコロと転がる。
『あぁ、ごめんごめん』
「っとと、大丈夫です!主様こそ、急にいかがされましたか?」
『いや、もう朝餉の時間なんだって驚いちゃって』
こんのすけにそう返す。するとこんのすけは素直に納得してくれた。
どうぞと何処からか持ってきてくれた眼鏡をこんのすけから受け取るとふと気付く。
長谷部さんいつの間に起きたんだろ。全然気付かなかった。
『んんん…』
昨日の夜の事を思い出し、一人唸る。
兼さんには裸を見られ、長谷部さんと手を繋いで寝る。
なんだか恥ずかしくて、顔を合わせづらいような気もするがそういう訳にはいかない。
『さてさて、顔でも洗ってこようかなぁ!!』
「そうですね!」
私は気を晴らすため、こんのすけと共に洗面所に向かった。
ぱっぱと済ませると部屋に戻って、布団などを片付け、また仕事服を着る。
「さぁ、大広間へ参りましょう!」
『…うん』
◯◯◯
『待って。やっぱ無理』
大広間の前へとやって来た一人と一匹だが、廉は大広間へと入れずにいた。
こんのすけは不思議そうな顔をする。
「主様いかがされましたか?」
『えー、なんでもないっちゃ、なんでもないんだけど。なんか入りづらいなーと』
「大丈夫ですよ!私もおりますし、陸奥守殿達もいらっしゃるではありませんか!」
『それは、そうなんだけどさー』
ここで駄々をこねても仕方がないのは分かっているのだが、あと少しの勇気が出ない。
それを察知したのか、こんのすけが勢いよく大広間の襖を開け放つ。