第2章 おはなし
『だから、自分が必要無いなんて言わないで下さい!』
自分の想いを伝えきると、少し息が切れてしまった。
長谷部さんにちゃんと伝わったかは分からない。
『長谷部さん!?え、何で泣いて…え!?』
長谷部の瞳から次々と零れ落ちる涙に廉は焦った。もしかして、長谷部を泣かしてしまうような事を言ってしまったのかと必死に記憶を辿る。
一方ボロ泣きの長谷部さんは、私の慌てた様子が可笑しく思ったのか小さく吹き出して笑った。
「っはは、すみません。そう、なんですね。俺の早とちりだったんですね、良かった」
安堵のような笑みを溢した長谷部さんに、ティッシュを差し出す。長谷部さんの目元は既に赤くなっていて痛々しい。
「あの、主…」
『は、はい。何で、しょうか?』
「…っあなたが、主で良かった」
『はは、大袈裟ですよ。でも、私も長谷部さんに出会えて良かったです。私、審神者としてまだまだへなちょこなので、これからも宜しくお願いしますね?』
「っはい!俺、主に一生ついていきます!」
『だから大袈裟なんですって!!』
私達は声をあげて笑った。
だが長谷部の涙は止まらない。当の本人もそれに戸惑っているようだった。
「すみません。こんな情けない、姿をお見せして、しまって」
『いえ…』
長谷部さんの泣きじゃくる姿は、まるで子供のように見えた。
いや、正確には刀としては私よりもずっと歳上だろうが、"人"としてはまだ子供なのかもしれない。
廉は慰めようと長谷部に手を伸ばす。
『…っ』
ふと手入れ部屋の前で眠っていた薬研を起こそうとして、怖がらせてしまったことを思い出す。
慌てて手を引っ込めた。
何も出来ない自分がもどかしい。
『長谷部さん!』
「…はい」
『あの、今日は一緒に寝ませんか?』
長谷部は驚いたように目を見開く。
伝え方がいまいちよくなかったようだ。
『勿論、布団は別々で。私は何もしません。ただ一緒に寝るだけです』
「……」
『あっ、いえ、長谷部さんに辛いことを思い出させてしまったので、1人で寝るのはちょっと寂しいんじゃないかなと思いまして。嫌なら!全然断って頂いても大丈夫です!』
あー…私、何変なこと提案してんだろ。
「良いですよ」
『え?』