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山桜【刀剣乱舞】

第2章 おはなし




「俺の方からもお願いします。今日は一緒に寝てもよろしいですか」

『は、はい!勿論です!』

「では布団を取って参ります!」


長谷部さんはそう言って立ち上がると、廊下を掛けていった。それをポカンとしながら眺める。


『私ものすごい変なこと言った…』


長谷部を慰めるためとはいえ、自分の出した提案に困惑する。
そして辺りを見回せば、部屋は1人で寝るのがやっとな広さ。


『とりあえず、か、片付けよう』


部屋に山積みの段ボールを端に詰め寄せる。
夜中に何をやってるんだ私は。

そう思いながら自分の布団も端に寄せていると、また廊下の方から足音が聞こえてくる。


「主!お待たせしました!」

『あ、すみません。わざわざ取りに行かせてしまって』

「良いんですよ。俺がしたくてやっていることですから」


なんて良い子なんだ。いや、イケメンなんだ。
長谷部さんはもう一つの空いたスペースに、持ってきた布団を敷きこちらを見る。

わ、なんか緊張してきた。


『寝ましょうか』


と、声をかけ長谷部を布団に入らせる。


「主?」

『ちょっと待って下さいね』


私は先程兼さんが用意してくれた水桶にタオルを浸す。
私が使ってたやつで申し訳ないが、今から取りに行くのも面倒だ。


『長谷部さん、目をつぶって下さい』


戸惑いつつも長谷部は目を閉じる。その上に私はそっと絞ったタオルをのせる。


「これは…」

『そのままにすると、目が腫れてしまうと思って。それじゃあ…』


私は部屋の電気を消した。暗闇の中、私も自分の布団に潜り込む。


『おやすみなさい』

「はい、おやすみなさい」


瞼をゆっくりと閉じる。
しかし隣に長谷部さんがいると考えただけで眠気を妨げた。


「主。まだ起きてますか?」

『起きてますよ。やっぱり、私とじゃ寝られません、よね』

「い、いえ!そういう訳ではなく。あの、主にお願いがありまして!」


隣で長谷部さんが起き上がる音が聞こえてくる。


「主と手を繋いでも、宜しいでしょうか」

『手を、ですか?良いですけど…』


私は布団から左手を出した。私よりも大きな手が重なる。
手を通して伝わる、心地よいぬくもり。


「ありがとうございます」


歴史だけじゃない。私は彼らも守らなくてはいけないのだ。
私はそっと目を閉じた。

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