第2章 おはなし
前任の審神者の逮捕。
この本丸に来る前に政府の人から聞いたのを覚えている。しかし、そんな最近の出来事だとは知らなかった。
「詳細はよく知らされなかったのですがその時、俺はどう反応したら良いか分かりませんでした。
悲しくも無く、かといって喜ぶ事も出来ず、主を無くした俺達はこの後どうなるんだ、という焦りが生まれました」
ふと長谷部は落としていた視線を上げ、廉と目が合うと眼を細めた。
「ですが俺は気を失っている期間が長かったらしく、聴けば既に新しい審神者が来たという事でした」
『それって』
「えぇ、貴女のことです。俺はまだ一日しか共にしていないですが主は、優しい。けど頼れる強さも合わせ持っています」
『……』
長谷部のべた褒めに気恥ずかしさを覚える。
しかし今の長谷部さんから聞いた話からは、私に不満があるようには思えなかった。
「ええ、そうですね。主は素敵な御方です。一人で何でも出来てしまう。だから、一人で何かを成し得ようとして結局失敗してしまう。
そして仲間も守れない、俺は必要、ないと考えるでしょう。その内俺の駄目な所に嫌気が、差して俺を捨てる事もお考えになり、そして…」
『待って待って!!何でそうなる!?』
「え」
『え、じゃなくて!それは長谷部さんの早とちりってやつです!!』
「で、ですが」
驚いた様子の長谷部さんをしっかりと見つめ返した。
自分の気持ちをちゃんと答えてくれた長谷部さんに対して、失礼の無いよう私もちゃんと答えなくてはいけない。
『長谷部さん。はっきり言います。私は長谷部さんを捨てる気はいっさいありませんから!
失敗が何ですか!!失敗くらい誰にだってあります!!
私だって失敗ばっかしますし、その、私兄がいるんですけど、頭とか私の方が悪いですし運動神経だって悪いし、全然敵いっこないんですけど…ってこれ何の話だ?』
途中話がずれた事に気付いて首を捻る。
いやいや、そうじゃなくて!!
『兎に角!私には長谷部さんや皆さんが必要なんです!!私一人じゃ何も出来ない!!歴史なんて大層なもの、とてもじゃないですけど守れないですよ!!』