第2章 おはなし
「本当ですか?まぁ良いですけど」
主に聞くとなればたぶん宗三は反対するだろう。だが俺は主の真意が聞きたい。何を思ってこの"るーる"を決めたのか。何かしら理由は有る筈だ。
宗三の案内が終了し、俺達は別々の行動を取ることになった。宗三は弟の小夜左文字の様子を見に、俺は夕餉の準備を手伝いに厨へ。
厨には先程の案内の時にも居た、白と黒の二人組。名前は確か、鶴丸国永と燭台切光忠だ。
二人とも身体のどこかしらに包帯を巻いている。
「さっきぶりだなぁ長谷部」
「やぁ、長谷部君。手伝いに来てくれたんだね。有り難う」
手伝いに来たと言っても料理は殆ど終わっていて、あとはお皿に盛り付けるのみ。お皿に盛り付けた料理は負傷して動けない仲間達のそれぞれの部屋に持っていくそうだ。勿論それは主も同じで、これは主と話す好機なのではと考えた。
「これは、主の分か?」
「そうだけど…」
「ならこの主の分は俺が運んで来よう!!」
「えっ、ちょっと長谷部君!?」
俺は料理が乗せられたお盆を持ち、主が居るであろう離れに向かった。離れに着くと、襖の前で声を掛ける。すると、中から主の声が聞こえてきた。
俺は主に断りを入れ中へと入る。
主は部屋の机に向かって、見たことのない機巧(からくり)で何かの作業をしていた。主は俺が部屋に入ってきた事を確認すると、一つ笑みを浮かべた。
「長谷部か、夕餉を持ってきてくれたのだな。そこの机の上に置いといてくれ」
「…はい」
お盆を机の上に置いて、俺は一つ息を吐いた。
「主、実はお話があって参りました」
「話?あー、すまないが今は仕事で忙しい。また後日でも…」
「いえ、俺は今お話したいのです」
とキッパリ言うと主は俺の顔をじっと見て、話を了承してくれた。食事と仕事が終わり次第、俺の部屋に来てくれる事になった。
俺が厨に戻ると、鶴丸と燭台切が気付くなり駆け寄ってきた。
「大丈夫か?」
二人に心配されたが、俺は何も無かったと言った。
それでもまだ心配そうな顔をする二人に笑みを返し、俺はもう一度何も無かったと言って夕餉の手伝いを続けた。
それから時間が経ち、夕餉を食べ終え自室で俺は主を待ち続けた。部屋で独り主に対する問いを頭の中で反芻していると、外から声が聞こえてきた。
この声は主だ。