第2章 おはなし
そう言えば確かこんのすけは管狐っていう妖怪、だったっけ。良く入れたな、この中に。
私は机の横のスペースに部屋にあった座布団を敷く。
その上にこんのすけの入った竹の管をゆっくり置いた。
『っし、お風呂~!お風呂~!』
着替えを取り出し、一応部屋の電気を消して部屋から出る。私は自分の記憶を頼りに廊下を突き進んだ。
『おおっ、やるやん自分!』
大浴場になんとか到着した。戸を開けて中の様子を覗く。
脱衣所には誰も居らず、他の人の衣服も見当たらない。謂わば貸切状態。
『ラッキ~!!』
私は着ていた緋袴などを脱ぎ、上手な畳み方が分からなかったがなるべく綺麗に畳んだ。眼鏡を外して、視界がぼやけながらもタオルなど諸々を持ち浴場に入った。
『今日だけで2度も入れるなんて贅沢だなぁ』
と一人でに呟き、全身を洗い終わると大きな浴槽にまずは脚を浸ける。思っていたよりも湯の温度が高かったが、勢いで全身を湯に浸けた。
『あちっ。はぁーあああ』
湯に浸かると自然と息が漏れた。今日の疲れが吹き飛んで行くようだ。
浴槽の縁に突っ伏すように身体の向きを変える。
『明日は、手入れの続きをして、内番とかも手伝えたら良いな。それと、本丸の人達と、仲良くなれるように、頑張らなくちゃ。あー、報告書も、書かなくちゃな』
一つ大きな欠伸をして、ちょっとだけなら良いかと目を瞑った。そのまま私は眠りに落ちていった。
「……い…き……よ!」
『……?』
誰かに身体を揺さぶられ、段々と目が覚めていく。それに合わせ、声のする方に目線を上げていくとそこには黒髪の人がしゃがんでいた。
『……っ!!うわああああ!!』
「……!!!」
私は驚いて距離を取ろうと咄嗟に後ろに下がる。
その時湯に浸かりすぎたからか、目が眩んで後ろに下がった勢いのまま湯の中に沈んだ。
すると湯の上から手が伸びてきて、腕を掴まれ一気に引き上げられた。
『っは、げほっ…』
すみませんと言ってまた距離を取ろうした瞬間、頭がぐらつき私の意識はそこで途切れた。