第2章 おはなし
しかし私は直ぐにその場を離れる事は無く、心の中にあったものを歌仙さんに聴いてみた。
『あの、歌仙さん!』
「ん?どうしたんだい?」
『歌仙さんはどうして、審神者の私に優しくしてくれるんですか?まだ会って間もないのに……あっ、いやその方が私としては嬉しいんですけど!』
「…それは」
歌仙さんは顎に手をあて小さく唸った。
えぇ、そんなに悩みます?
「んー、何と表現したら良いのかな。昨日君に手入れして貰っただろう?その時、ここの胸の奥と言うのかな。そこが温かくなったんだ」
『胸の奥?』
私にはそれが良く分からず頭に疑問符を浮かべた。私を見た歌仙さんは優しく微笑んだ。
「君の力がそうなのかな。温かく優しいでもどこか力強い。それを胸の奥に感じて、君は前の審神者とは違うと思ったんだ。だから、僕は君に着いて行くと決めたんだ」
『歌仙さん…』
「他の刀達が今は心を開いてくれていなくても、君なら彼らを救える。そう気に病む事じゃないよ」
『はい!!ありがとうございます!なんか元気出ました!!』
勢い良く返事をして、私は早く報告書を完成させるべくこんのすけと共に厨を飛び出した。
◯◯◯
パソコンと向かい続け、何時間か経った頃私は両手を高く掲げガッツポーズをした。
『終わったー!!』
「……っは!ご、ご苦労様でした!ふゎ~、っと失礼。それでは、報告書を政府に送りましょう!」
『了解!』
眠そうなこんのすけに送信方法を教わりながら、送信ボタンをクリック。これで今日の業務は終了だ。
自分のスマホの電源を入れ、時間を確認すると既に11時を回っていた。こりゃあこんのすけも眠くなるわ。
でもこの時間なら風呂は空いていると思うし、今の内さっさと入って寝ちゃおう。
『こんちゃん、私お風呂入って来るね。こんちゃんは寝てても良いよ』
「ですがそれだと主様にご案内が…」
『大丈夫!大丈夫!行き方なら何となく覚えてるから!』
「そうですか?ならば遠慮なく」
こんのすけは大きな欠伸をした後、ボフンっという音を立て煙の中に姿を消した。
その煙はすぐに無くなり、中から赤と白の特徴的な組紐が巻かれている竹の管が現れた。