第2章 おはなし
今日最後の手入れを終えると、一気に脱力感に襲われた。
『ご苦労様でした。これで手入れは終了です』
「行きますよ、お小夜」
「……はい、宗三兄様」
ピンクの長髪の人はそそくさと部屋を出ていった。青い髪を後ろで結った男の子は一度は振り向いたが、前の兄を追って出て行ってしまった。
『疲れたー』
二人が居なくなった途端、私は畳の上に倒れた。
疲れた様子のこんのすけも側で倒れ込む。
『こんのすけも、お疲れ~』
「…はい、主様もご苦労様でした」
「二人共大丈夫か?」
「『大丈夫じゃないです』」
こんのすけと見事にハモり、薬研は小さく吹き出した。
「ははっ、そうか。昼前だが、何か食い物とか持ってくる。こんのすけは何か欲しい物はあるか?」
「すぴー」
『寝てる…』
いつの間にかこんのすけは寝息を立てていた。
随分と気持ち良さそうに寝ている。
「大将ちょっと待ってろよ」
『うん、ありがとー』
部屋から出ていく薬研に手を振って、見えなくなると手をだらんと下ろした。
すると、同時にやってくる眠気。
ダメだよ。薬研が折角持ってきて……くれるから……
結局私は眠気に勝てず、夢の中へと落ちていった。
◯◯◯
「おーい、昼餉の準備が出来たぞー。ん、主はどうしたんだ?」
「大将達は今、お休み中だ」
昼食が出来た事を伝えに来た御手杵に、薬研は閉じられていた手入れ部屋の戸を開けて中の様子を見せた。
手入れ部屋の中では、スヤスヤと寝ている廉とこんのすけの姿があった。
「こりゃあ、起きそうにないな」
「わざわざ伝えに来て貰ったのに、悪いな旦那」
「良いってことよ!でもまた倒れちまったのか?」
「いや、これはただ疲れて寝ただけだ。大将の頑張りで、負傷していた奴らの半分は手入れできた。凄いよ大将は…」
「…そうか」
薬研は廉達を起こすまいと、部屋の戸をゆっくり閉めた。
◯◯◯
『……ん』
深く沈んでいた意識が徐々に浮上していく。
私は重たい瞼を持ち上げ、まだ覚醒仕切れていない頭で自分が今まで何をしていたかを思い出す。