第2章 おはなし
こんちゃんと薬研と私は手入れ部屋に向かった。手入れ部屋に着くと、私達はふと立ち止まる。
「じゃあ、大将は此処で待っていてくれ」
『うん、分かった』
素直に頷くと、薬研は走って行ってしまった。
私は"頑張るぞー"と頬を叩いて気合いを入れ、手入れ部屋に入る。
昨日に比べて血の匂いは薄れてきているが、まだ匂いは残っていた。
少しでも空気を入れ換えようと部屋の窓を開けた。
『こんのすけ!!今日はこんのすけにも頑張って貰うからね!』
「はい!御安いご用です!!ですが、くれぐれも無理は為さらずに」
『はーい』
私は手入れ部屋の戸棚から札を取り出し、神力を札に込めた。その札を手入れの人形に貼り付ける。
『君達も今日はよろしく!』
人形は声を出さないものの、拳を作って勢い良く頷いた。心強い仲間だ。
こんのすけにも人形に張り付けた物とは違う、手伝い札を貼った。
それから暫くして、薬研が戻ってきた。
薬研に肩を借りてやって来たのは、黒い長髪で赤い着物を着た男性と、その男性の片側に黒い短髪のジャージを着た男の子。
「新しい主って、女じゃねぇか…っぐ!!」
「兼さん!あまり無理はしないで…!!」
「一旦下ろすぞ和泉守の旦那」
三人はゆっくりと畳に腰を下ろした。薬研は一人立ち上がって、次の人を連れてくると言って部屋を出ていった。
長髪の男性は一息吐くと、私に視線を寄越す。
『私の自己紹介は後々という事で。本体をお出し頂けますか?』
「あぁ」
長髪の男性と短髪の男の子は刀本体を出してくれた。
私は人形達とこんのすけに手入れをお願いする。
仄かな光と共に、二人の手入れはあっという間に終わった。
『ご苦労様でした!これで手入れは終了です』
「すまねぇな」
「兼さんちょっと待ってよ!!」
長髪の男性は立ち上がって部屋から出ていってしまった。その後を短髪の男の子が追い掛けて行く。
まぁ、初めて会ったし、こんなもんだよね。そうだよ、これからだ!これから!
私は気合いを入れ直して、薬研が次々と連れてきた人達の手入れをこなしていった。