第2章 おはなし
押し入れを開けると中には突っ張り棒がしてあり、ハンガーも掛けてあった。
私は制服を素早く掛ける。
『あー、手入れ部屋って何処でしたっけ』
昨日手入れ部屋の前で倒れ、起きたら自室。本丸に来たばかりの私には、場所が分かる筈もなく。
「俺が案内しましょう」
『ありがとうございます』
あ、そう言えば名前聞いて無かった。
廊下歩いている時に気付き、先ずは自分から名乗ろうとすると先を越されてしまった。
「すみません。自己紹介が遅れました。
へし切り長谷部と言います。できればへし切りではなく、長谷部と呼んで下さい」
『私は、レンです。宜しくお願いします』
「はい。こちらこそ宜しくお願い致します」
第一印象は執事みたいな礼儀正しい人。長谷部さんは歩きながら此処は広間等と説明もしてくれた。
って…中々な広さだな此処。覚えられるだろうか。
手入れ部屋に着くと、向かい合う形で腰を下ろした。
昨日出会った、御手杵と歌仙の姿は無かった。
「主。すみませんが、宜しくお願い致します」
長谷部が両手を前に出すと、淡い光と共に一振りの刀が現れた。長谷部の本体だ。
私は前回と同じように神力を送った依頼札を人形に貼り付ける。人形に"宜しく"とお願いすると、コクンと頷き長谷部の本体に触れた。
「主様、今回は手伝い札も使ってみましょう」
『手伝い札?』
「はい。昨日手伝い札は切らしているとお聞きしたので、政府から少し多目に貰って参りました」
こんのすけは何処からか、手伝い札の束を出した。
依頼札と違い、札には既に文字が浮かび上がっていた。
「それを私にお貼り下さい」
『え、こんのすけに?』
「はい!物は試しようです。何処でも良いのでお貼り下さい」
『分かった』
手伝い札の束から一枚取り出し、こんのすけの頭の上に置いた。すると、軽い音と共にこんのすけが煙に包まれる。
その煙が静かに消えると、現れたのは頭に三角巾を巻き、前掛けをしているこんのすけだった。