第1章 アフロのカットは職人技
その後、姉さんは約一ヶ月に一度のペースで真選組にやって来る。
姉さんはその明るい笑顔に加えて、アネゴ肌の面倒見の良さと髪結いの腕の良さで、あっという間に隊士達の人気者になった。
姉さんのことを、誰もが心待ちにするようになった。
そしてそれは俺や終兄さんにとっても同じことで、月に一度の散髪日が待ち遠しくて仕方が無かった。
今日は待ちに待った散髪日だ。
「あーあ、姉さんが来る時間まで、あと1時間もありまさァ」
縁側に腰掛けた俺は、待ちきれなくなってため息をついた。
隣に座る終兄さんは湯呑を手の中で転がしながら、ぼんやりとした表情をしている。
きっと兄さんも姉さんの到着を待ち焦がれているのだろう。
土方さんには怒られちまうけど、姉さんが来るのが待ち遠しくて俺たちはよくこんなふうにぼんやりしちまう。早く会いてぇなァ。
ひと月じゃそんなに髪は伸びねぇけど、姉さんがもっと来てくれるってんなら、毎日リアップしたって構わねェ。
そんな事を考えながら俺も空をぼんやりと眺めていたら、突然スッと顔に影がかかった。
見れば終兄さんが立ち上がっていた。
『ちょっと散歩に行ってくる』
普段から使用しているスケッチブックにサラサラと書いて、終兄さんは歩き始めた。
スタスタと歩いているように見えるが、その歩速はまるで小走りしているかのようだ。
「散歩」なんてのはただの言い訳で、本当は何をしに行くのかなんてすぐに分かっちまった。
「俺も一緒に行きまさァ」
姉さんを迎えにね、とは言わない。そんな野暮はしねぇや。