第1章 アフロのカットは職人技
さっそく髪結いが始まった。
隊士達は先を競い合うように押し合いへし合いをしながら並び、まるで大人の女に憧れる中坊みたいに頬を赤く染めて髪を切ってもらったのだった。
そいつらほど俺は女に興味は無ぇんだが、何だかみんなが押しくらまんじゅうしてるみてぇで面白そうだったから、俺も列には並んでいた。
目の前に山崎がいやがったから、袈裟懸けに切り捨てといた。
山崎の死体を丁度埋め終わった頃に、俺の順番がやって来た。
女の前に置かれた小さな丸椅子に座ると、ふわりと微かに花の香りがした。
女は俺を見下ろして微笑むと、「綺麗な髪ね」と言って優しく俺の頭を撫でた。
その笑顔が故郷に残してきた姉上と重なって、俺は一瞬でその笑顔に落ちちまった。
だからそれ以来俺はその人のことを姉さんと呼んでお慕いしているって訳だ。
俺の次は、終兄さんの順番だった。
終兄さんは相変わらずの無口だったが、ペコリと頭を小さく下げてから椅子に座った。頭を下げた拍子に、鮮やかなオレンジ色のアフロがもっさりと揺れる。
「よろしくお願いしますね、斉藤さん」
カットクロスを肩にかけながら姉さんがニコニコと笑う。
髪を切り終えたもののまだ帰らずにその場にいた俺は、その言葉を聞いて不思議に思った。
「姉さん、どうしてその人の名前が分かったんでさァ?」
俺が見ていた限り、終兄さんは一言も喋っちゃいねぇ。姉さんに隊士の名簿を渡している訳でもねぇし、一体どうやって終兄さんの苗字を知ったんだ?
「え?だって今、名乗ってくれたよ?」
俺の問いに対してキョトン、と首を傾げる姉さんに、俺の方も首を傾げちまった。