第1章 アフロのカットは職人技
俺たちが先を競うようにして中庭に到着すると、そこにはすでに隊士達の行列がズラリとできていた。
庭の一角に大きなビニールシートが敷かれて、小さな丸椅子に腰掛けた隊士がまるでテルテル坊主のような格好になっている。
その後ろに立ってチョキチョキと手際よくハサミを動かしている女性こそ、俺たちが全力疾走してまで早く会いたかった相手、姉さんだ。
「あら総悟くん、終くん」
俺たちの姿に気付いた姉さんは、にっこりとまるで花が咲いたように笑った。そして終兄さんの頭を見るやいなや、目を丸くした。
「あらららー!終くんは、またもっさりしたねぇ!これは切り甲斐がありそう」
そう言って姉さんは、終兄さんのアフロを優しく撫でて心底嬉しそうに笑ったのだった。
姉さんと終兄さんはとても仲が良い。それは同い年だから、という気安さもあるのかもしれない。
二人が同い年だということは、姉さんが言っていた。具体的な年齢は教えてくれないが、とにかく同い年なのだと。
女性に年齢をしつこく聞くのは失礼だから、それ以上は聞いてねぇ。それくれぇの礼儀は俺だってわきまえてらァ。
というかそれ以前に、そもそも俺たちは終兄さんの年齢を知らなかった。
極端に無口な終兄さんには謎が多くて、真選組結成前からの付き合いである古参組でも分からない事だらけなのだ。
むしろ、知っている事のほうが少ないかもしれない。
そんな終兄さんから、姉さんはいとも簡単に年齢を聞き出した。いや、あれは「聞き出した」と表現してもよいものなのかどうか。