第1章 アフロのカットは職人技
ぐいっ、と万事屋の旦那が姉さんの身体を引き戻すと、ぎゅっと手をつないだ。よりによって恋人つなぎとは、恐れ入るぜ。
「終くんよ~、何だか知らねェが、は俺専属の髪結師なんだわ」
ピキッと終兄さんのこめかみに青筋が走る。
『さんは真選組の専属です。もっと言えば、俺のアフロ専属です』
終兄さんも、万事屋の旦那がやったみたいに姉さんの身体を引き戻した。
さすがに旦那みたいに手をつなぐことまではできないのが、終兄さんらしいや。
「俺の天パだ」
『いや俺のアフロだ』
グイッ、グイッと腕を引かれて二人の間を行ったり来たりしている姉さんは、最初は苦笑いをしてされるがままになっていたが、いよいよ我慢の限界が来たらしく声を上げた。
「もうっ!二人共特徴的な髪質で散髪に苦労してるのも分かるけど、だからって喧嘩しちゃダメでしょ。天パもアフロもまとめて私が切ってあげるから安心しなさい!」
それを聞いた旦那と終兄さんは、見ているこっちが可哀想になるくらい、ポカンと口を空けて立ち尽くしていた。
俺は腹の底から笑いがこみ上げてきて、我慢するのに必死だった。
姉さん、そうじゃねェ。二人が取り合っていたのは、「髪結師」じゃなくて「惚れた女」でさァ。