第5章 VSストーカー
まさか泣き崩れるとは。さすがにそこまでは思いつかなかった。
「耀ちゃんは、街で僕が小銭をぶちまけた時、唯一優しく声をかけて拾い集めるのを手伝ってくれたんだ。まわりの人は誰一人として拾ってくれたりしなかった。それどころか邪魔だってキレられたり、笑われたり…でも、耀ちゃんだけは僕に優しくしてくれたんだ!なのに、なんでそんな事言うの…。うっ…」
私はこの話を聞いて思った。全く記憶にない。
人違いなのか。それとも単に記憶にないだけか。
どちらにせよ、そんなことでストーカーされてたのか。誰だよ人に親切にすれば必ず返ってくるからって。変なの来てるぞこら。
「その男に毒されちゃったんだね…今、助けてあげるからね。」
泣いたと思ったら、狂気に満ちた目を王子(仮)に向ける。
そして、徐々に近づいてくる。
やばいやばいやばい。刃物相手なんかした事ないし!昔空手少しだけやってたけどこんなの無理だよ!!!
とにかく王子(仮)だけでも護らないと!!
『早く、家の中に入って!!』
「お前はどうするんだ?死ぬぞ?」
『わかんないよ!でもとにかく今はあなたが狙われてるんだから早く逃げなきゃ!』
王子(仮)はキョトンとした顔で私を見下ろす。
そんな顔してないで早く家入れよ!!
怒りながら家の中へと押し込もうとすると、キョトンとしていた王子(仮)はニカッと笑い
「お前、気に入ったぞ。」
そう言って、私の頭をクシャッと撫でた。