第5章 VSストーカー
「そんな男で俺が納得すると思う?ふふっ、僕はね、君には僕しかいないって確信してるんだよ。だから、僕の方においで?」
笑顔に怒りを隠しつつ、未だに私の事を諦めないストーカー。ここまで来るともはや賞賛するわ。私に特別なものって何も無い。顔も普通、頭も普通、スタイルだって特別いいわけじゃないし、運動がずば抜けてできるわけでもない。至って普通の大学生。他と違うのなんて親がいるかいないかくらい。それなのに、どこにそんな執着する部分が有るのだろうか。
かと言って、着いて行くなんて選択肢はないのだが。
『これで最後です。お引き取り下さい。これ以上ここにいるつもりなら警察に連絡します。』
「なっ…」
「さっさと帰りな。今ならまだ許してやるって言ってるんだ。」
「………もうこれで最後にするよ。」
最後。男から発せられたその言葉に私は安堵した。
これでようやくストーカーから解放される。王子(仮)との生活が始まる訳だが。
このとき、私の安堵は油断となっていた。