第5章 VSストーカー
怖い。私の心はその感情に囚われていた。
助けを呼ぶことも出来ないまま後ずさることしか出来ない私は、無力そのものだった。
「今そっちにいくからね…」
ストーカーは狂気に満ちた笑顔をこちらに向け門をよじ登る。
門と言っても立派なものではなく、せいぜい私の身長くらいしかない普通のもの。ストーカーにとってそんな程度の門を乗り越えるのは容易かった。
とうとうこちら側にストーカーがやってきた。
「耀ちゃん…えへへ、こっち来ちゃった。ずっと一緒に居てあげる。彼氏なんか忘れるくらい、ずっと…」
怖い。怖い怖い怖い怖い怖い。
私たちのあいだに何もなくなった途端、恐怖はさらに倍増した。
声も発することが出来ない。逃げる事もできない。それどころか王子(仮)の事も忘れていた。王子(仮)は私が呼びに行くまで待っててと言ってあるから呼ばなければ来ない。もう、王子(仮)のことなど頭にない私には為す術もなかった。
自分がこんなにも無力だとは…親を亡くして、1人で生活して…強くなったと思ってたのに、それはあくまで“つもり”だったんだ。
「さあ、僕の家に行こう。君の事幸せにしてあげる。」
ストーカーが私の腕を掴み引っ張ったその時だった。