第2章 悔いなき選択 (前編)
仲間に入りたいと言われたあの日から、イザベルへ立体起動装置の使い方を叩き込んで数ヶ月が経った。
イザベルは意外と物覚えが良く、立体起動装置の使い方も生まれ持った才能からか自分の物にするのが早かった。
そして、イザベルは私達の仲間であると同時に私の中で妹であるかのような大切な存在になった。
いつものように仕事を終わらせて自分達の家に帰るとそこには白髪でコートを羽織った1人の男性の姿があった。
「何だよ、オッサン。何か用か?」
「仕事を頼みに来た」
頼みに来た……?
私達は自分達の為に仕事はすれど、他人の仕事を受け持つ覚えはない。
「家を間違えたんじゃない?……、此処は便利屋じゃないよ」
「報酬は弾む」
『帰れ』
どうにもキナくせぇ。
コイツとは関わらない方が良いと私の勘が言っている。
「既に前金を支払っているのだがね」
「冗談だろ?アンタとは初対面だ」
ファーランの言う通り、コイツと顔を合わせた覚えはない。
このジジイは難癖つけて漬け込むタチか?
「そう、だが彼の事は知っている筈だ」
そう言って男性が視線を送った先には2人の男性に抱えられているヤンの姿があった。
「……ッ!ヤン!」
「彼の足はもう限界だ。地上の病院で治療をしなければ。……、そうだろう?リヴァイ君」
「どういう事だっ⁈」
このジジイ……、もしかしてヤンを人質にとるつもりか……?
「言ったろ、前金だ。……、話は聞いてもらえるね?」
『……、いいだろう』
ヤンを人質に取られている以上は、コイツの言う通りにする他なかった。