第2章 悔いなき選択 (前編)
ファーランは小鳥の傷を手当てしてから、手慣れたように小鳥の羽へ包帯を巻いていく。
「うまいねー、アンタ。……、あっ!そうだ、名前は⁈アタシはイザベル!」
「ファーランだ。あっちは、リヴァイ」
「ファーラン……。それと、リヴァイの兄貴か……!」
『……、兄貴?』
リヴァイは怪訝そうな顔をする。
その表情を見たファーランは何を勘違いしたのか、イザベルに向かって慌てて訂正する。
「い、イザベル!リヴァイは兄貴じゃなくて姉貴だっ!」
「あ……、姉貴?そう……、なのか……?」
『別にそこを気にした訳じゃねぇ……。兄貴でいい』
今更性別云々を勘違いされる事はどうだっていい。
寧ろ、この地下街では男だと思われてた方が都合が良いからな。
幼い頃の体験が自分にそう気づかせてくれた。
この容姿だからか初対面で私が女だと気づいた奴は今まで1人もいない。
多分、私から明かさない限り誰も気づかないだろうな……、
「じゃあ、リヴァイの兄貴!なぁ、頼む!アタシも仲間に入れてくれっ!」
「えっ?」
「アンタたち立体起動装置を使ってただろ?見た事あるんだ!すっげぇ羨ましかった……。鳥みたいに飛び回ってさ。あれ、やってみたいんだ!アタシもっ!!」
「……、どうする?」
鳥みたい……、か。
そんな事思った事もねぇな……。
イザベル、お前の目には私達がそんな風に映っていたのか?
それはとんだお門違いだな。
此処をどんなに自由に飛べたとしても、こんな鳥籠に囚われて、本物の空を飛べなきゃ鳥とは言えねぇだろうが。
だが、そうだな。
もし、お前が言うように私達が鳥みたいになれるんだとしたら……、
いつか、
『此処にいるなら、立体起動より先に掃除を覚えろ』
地上に出て、堂々と太陽を見上げられる日がくるのだろうか?