第4章 最後の希望 (閑話)
「ロディ……、いい……?」
「はい、母上……」
ロドリーはフェリアの顔がよく見える距離まで近寄った。
「貴方には……、本当は、自由に生きて欲しいの……」
「え……?」
「この家に縛られずに……、あの本で見た世界を、貴方の目で見て確かめて欲しいの……。でもきっとそれは無理ね……。壁の外には恐ろしい悪魔がいるもの……」
「恐ろしい……、悪魔……?」
「えぇ……、それは私達が自由を手に入れる事を全力で阻むでしょう……。此処の人々はそれを知ろうとはしないわ……、知りたくないのよ……。私達がこの壁の中で"生きている"のではなく、"生かされている"という事に……」
「母上……?それはどういう……」
「貴方は自由で自分らしくありなさい……!作られたロドリー・ガナードではなく、ありのままのロドリー・ガナードとして……!」
フェリアは力強い眼差しでロドリーへと訴えかけた。
「いいわね……?それが私の僅かな望みです……。そして最後に……、あの本を私と一緒に燃やして」
「……!」
「お願いね……」
今までそれを言う為だけに生き延びていたかのようにそれだけを言うと母上は静かに息を引き取った。
僕は母上の遺言の通りに、母上の遺体と共にこっそりあの本を忍び込ませて灰になるまで燃やし尽くした。
その後、僕の屋敷へと複数の憲兵団が調査とやらでやって来て、僕の部屋や母の部屋までもくまなく捜査された。
僕は母上が言っていた本の秘密がこの事だったのだとこの時初めて理解した。