第2章 悔いなき選択 (前編)
「ほら、待たせたな。前回と今回の分だ」
ファーランは今日も街の奴らから掻っさらってきた金を仲間達に配る。
「うわぁ……、ラッキー!!」
渡された札束を目の前に瞳を輝かせる仲間達。
こんな生活だが、私達のやっている事が非道な行いだとしても、人の物を奪う事でしかこの地下街で今の私達は生きていけない。
「お前ら、浮かれて使いすぎるなよ?目つけられるぞ」
そんな風に茶化して見送るファーランの会話を聞きながらナイフを磨く。
「立体起動装置が手に入ってから仕事が格段にやりやすくなったよなぁ……。皆んなへの分け前も増えたし」
『増やし過ぎた奴もいたように見えたがな……、理由は?』
「……、アイツの。ヤンの足がまた悪くなってるの気づいただろ?高いんだよ、薬。最近値上がりしたしな。チッ……、地下商人の奴ら。聞いたか?階段通行料も値上がりしたって」
そうだ、コイツは仲間思いのいい奴だったな。
『あぁ』
「あれじゃあ、貧乏人は、益々陽の光を拝めない。」
私達は、地下街に足の悪い奴が多いのも日光を十分に浴びる事が出来てない所為だと薄々気づいていても、アイツらがあの階段を買い占めている以上どうする事も出来ない。
『お前の母親もそうだったな。それで……か、』
ファーランの気持ちも分からなくはない。
私も、足が悪くなった果てに自力で歩く事も儘ならず、路地裏で野垂れ死んでいく奴らを今まで嫌という程見てきた。
『それにしても大金に見えたが、』
「手入れ金だから……。アイツはもう、無理だ。せめて、いい病院探すよ」
『……、そうか』
「後どれだけあれば……、上に住めるかな」
後どれだけあれば……か。
どれぐらい掛かるんだろうな、それは。
日に日に階段通行料は値上がりする始末、地上に出られたところで居住権さえ持っていなければ私達が地上で堂々と暮らせる保証は無いだろう。
居住権だってどうすれば手に入るのか、階段通行料以上に金を払わなければならないのかそれすらも分からない。
此処に生まれてしまった以上、私達に明るい未来や自由なんてものは存在しないと思っていた方がいい。