第3章 悔いなき選択 (後編)
自分達だけの力で巨人を倒せた事に喜びを隠せないイザベル、ファーランと、同じ様に1人で巨人を倒したリヴァイの元にその一部始終を見ていたエルヴィンは馬を寄せた。
「確かに初陣にしては良い動きだったが……、"ガスを使い過ぎ"だ。壁外では特に注意しろ」
「なッ……!」
巨人を倒したというのに、ただいちゃもんをつけられたと思った3人はエルヴィンに食って掛かった。
『仲間達の命よりも、持ち物の節約を重視しろと……?』
「無駄な動きが多いと言っている。何か迷いがあるのではないのか?」
『……!』
「それは直ぐに、お前自身を殺すぞ……、」
リヴァイへとそれだけを言い残すとエルヴィンは去って行った。
「くっそぉ……ッ!1人になった時、見てろよ……ッ!!」
「シッ……!聞こえるぞ、」
『……、』
何なんだ、あの言葉は、あの目は……!
あの男、エルヴィン・スミスという男は私の全てを見抜いているというのか……⁈
いや、偶然だ、そうに違いねぇ……。
でも、もし私の嫌な勘と不安も、そして私達の狙いも見抜かれているとしたら……?
まさか、な…………、
空一面が灰色の雲に覆われる。
隊列を戻して更に馬を走らせていると、エルヴィンが予想していたように激しい雨が降り出す。
視界が悪い雨の中、リヴァイ達も3人で固まって馬を走らせていた。
「雨ってこんなに振るんだな!」
「あぁ……!これじゃ巨人が居ても見えねぇぞ⁈」
いや、それは寧ろ好都合だ。
『……、チャンスだ。この雨に紛れてエルヴィンに近づける』
「「……!」」
「……、リヴァイ!」
「やるのか……⁈兄貴!」
『あぁ……!だが、3人同時に離脱するのは不自然だ。私が行く』
私1人なら、この視界の悪さを利用して誰にも気付かれずにエルヴィンを殺す事が出来る。
「……!確かに、迂闊に動き回るのはヤバい」
「仕方ねぇ……!頼むぜ、兄貴!!地上の居住権、取ってきてくれよな!」
あぁ、その約束は絶対に守ろう。
『……ッ!もし何か聞かれたら、地形を確認しに行ってると言え』
「分かった!」