第3章 悔いなき選択 (後編)
ファーランがエルヴィン・スミスの部屋に入り、調べ周ってから30分は過ぎた。
そろそろ会議が終わってエルヴィン・スミスが戻ってきてしまうだろう。
指笛を吹き、ファーランに時間の限界を知らせる。
「何回やっても駄目だ……。部屋に置いてないと思った方がいい」
「えっ……!じゃあ、何処にあんの?」
「お前、絶対に取られたくない物はどうしてる?」
「決まってるよ……!腹巻の中!……、あ?」
自信満々に答えたイザベルにファーランは呆れる。
「エルヴィンが腹巻きをしてるかどうかは分からないが……、そう。持ち歩いてる可能性は高い。……で、考えたんだけど……、壁外調査を利用する」
ファーランは危険を冒してでもやり遂げると覚悟を決めたようだった。
「壁外なら、エルヴィンや他の奴らの注意は巨人に集中するからな。必ず隙が出来る筈だ」
「なるほど……!それがいいね」
「リヴァイ、いいな?」
『あぁ……、』
賛成の意を返すも、リヴァイの脳裏には不安がよぎっていた。
あの時、ファーランとイザベルが捕まっている姿を見て私は2人が苦痛を受けたり、傷つけられたりするのは嫌だと思った。
それに、アイツら2人は立体起動装置を普通の人よりは上手く扱えているだろうが、私程上手く扱えているわけではない。
それらの不安が私の頭をよぎり、ファーランとイザベルには危険な真似をさせられないと思った。
『但し、私1人で行く』
「「えっ……?」」
『お前達は適当な理由をつけて残れ』
「兄貴……。何でだよっ……⁈」
リヴァイの意見を受け入れられないイザベルが堪らず反論する。
『私達はまだ本物の巨人を見た事がない……。壁外も初めてだ。行って帰ってくるだけで精一杯かもしれん。私1人なら、何とかなる』
「……っ!そんなの……っ!!」
ファーランはリヴァイに食ってかかるイザベルを手で押さえる。
「つまり、俺達には無理だって事か……?」
『そうだ……。私の勘だ』