第3章 トリップ
〜 ピッコロside 〜
(この女は何者なのか……)
眠る女を前にオレは眉間に深く皺を寄せた。
ただ、この女を見ている。
ただそれだけで心臓のあたりが苦しくなるのだ。
今までに感じた事のない違和感に少しイライラする。
ならば見なければいい。
離れればいい。
それは分かっているのに、何故か気になって仕方ない。
いつもの自分らしくなく、時に溜め息を吐きながら部屋の中をうろうろと歩き回る。
…ふとベッドの近くで足を止め、眠る女の顔を覗き込む。
思わず頬に触れたくなる衝動に驚き拳を握り締めた時、閉じていた瞼がピクリと動いた。
ピ「ッ!!」
慌てて身を引き数歩後ろに下がる。
「ん………」
女はゆっくりと目を開けた。
そのまま暫くボーッとしていたが、不意にガバッと跳ねるように飛び起きた。
突然の見知らぬ風景に困惑しているようだ。
女はゆっくりと周りを見回していたが、窓際に寄り掛かっていたオレと目が合うと、動きを止めた。
「……………」
女は無言だった。
ピ「……………」
オレも何も言わなかった。
女は真っ直ぐにオレを見つめてきた。
女の黒と紫の目は鋭く、力強かった。
…息が止まりそうだった。