第3章 トリップ
〜 ナレーション 〜
…そこは高い高い空の上。
雲よりも遥かに高い上空に静かに存在する白く美しい神の住処。
建物の外には白いターバンに白い大きなマントを纏った男が目を閉じて静かに空中に浮いていた。
「!?」
突然すぐ傍に感じた不思議な気に驚いたように目を開ける男。
男が周りを見回すと数メートルほど先に大きな白い光が現れた。
男が少し警戒しながら光に近づくと、光の中からぼんやりと何かが現れた。
…どうやら人間のようだ。
それがはっきりと人間の女だと認識できるほどになると、そのまま放り出されるように真っ逆さまに落ちてきた。
男は咄嗟に両腕で女を受け止めた。
上を見ると、白い大きな光はそのまま小さくなって消えてしまった。
「どういうことだ……?一体どうなっている……」
男が見下ろすと、腕の中には絆創膏と包帯だらけでぐったりとしている女。
白くサラリとした長い髪。
伏せられた長い睫毛に桜色の薄い唇。
白い滑らかな肌を覆う包帯と絆創膏が痛々しい。
「ッ!!」
男は女を見た途端、不可解な気分になる。
「何だこれは……心臓のあたりが…気持ち悪い……」
今までに経験したことのない心臓の疼き。
その原因がこの女である事は分かるのだが、どうにも理解できない。
男は眉間に皺を寄せた。
「ピッコロさん?今、何か不思議な気を感じたんですが……あれ?その方は?」
神殿の奥から少し慌てたように出てきたのはピッコロと呼ばれた男を小さくした様な可愛らしい少年。
その後ろから全身真っ黒で頭にターバンを巻いた男も現れた。