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狼と赤い果実《ジョジョの奇妙な冒険》

第3章 お前は誰だ?




8年前。イタリア。ミラノ。


雨が降り、肌寒く感じる夕方のことだった。


動けない一匹の狼が、道端で倒れていた。


見た目は、白い毛並みと赤い瞳で、とても美しい姿だった。


しかし、前足の辺りに出血が見られ、しとしと降る雨で徐々に体力が奪われ、明らかに弱っていた。


傘を差して通り過ぎる人々は、物珍しいと思っても、手を差し伸べようとはしない。


何故なら、喉元を噛みつかれるかもしれないという恐怖の防衛本能が、そうさせないからだ。


「クソッ!どこに行った!」

「怪我でまだそう遠くは行ってないはずだ!!探せ!!」

「チッ!雨で血痕が無くなってるぜ」


スーツを着た怖そうな男たちが、傘も差さずに走っていた。


この地元では顔が通った有名なギャングだった。


傘を差す余裕がないほど、何かを夢中で追いかけていた。


大降りになっていき視界が悪くなる中、道の真ん中に小さな女の子が立っているのが見えた。


片手に大きな麻袋を持って、赤いレインコートを着た子供だ。


雨除けでフードを被っているため、顔は隠れていた。


「おい嬢ちゃん。ここらへんで珍しい動物を見なかったか?白い毛並みのデカい犬みたいな狼だ」


「……あっちに行ったよ」


子供は反対を指さして、大人たちは行ってしまった。


完全にいなくなったのを確認して、子供は白い狼のそばに近寄った。


「大丈夫。もう行ったよ」


何の躊躇もなく、頭をなでた。雨に濡れていたため、少し冷たかった。


狼はうなり声をあげる体力も残っておらず、女の子を見上げた。


子供は何かの勘で、狼はお腹が空いているのだと考え、袋からゴソゴソと音を鳴らして取り出した。


それは、大きなりんごだった。


「食べる?」


狼は大きな口でそれを頬張った。


「こんな世界でも、どんなに辛いことがあっても、頑張って生きなきゃね。お互い」


子供は笑顔でそう言った。


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