第2章 No.9
イタリアのとある場所にて。
「先輩!“アイツら”が皆殺しにされたと報告が!どうやら、パッショーネの暗殺集団の仕業らしいっす!」
ソファーに座っているスーツを着た男に対して、その部下らしき男が跪いて言った。
折れそうになるのではないかと心配になるくらい、ひょろひょろな体で、貫禄がない。
「おいおいおいおい。待て。パッショーネだと…?このイタリアで最も大きなギャング組織じゃあねェか?例のガキ共は?」
「お、恐らく、パッショーネが保護しているか、またはとっくに始末したかもしれません…!」
「かもしれませんだァ…?!まだ定かじゃあねェってわけか!取りあえず、連絡ありがとう!」
上司の男は持っていたトランプを置いて、動揺を見せた。
きつね顔でスーツの色もきつねのような黄色だ。
「情報が漏れたってことは、“狼”の身に何かがあったかと……」
「……やべェな。しかも、暗殺チームだと…?」
上司の男はうぬぬと声を上げたが、トランプの相手である男がぽつりと呟いた。
「パッショーネ…か。懐かしい響きだな」
動揺することなく、最後の二枚のペアカードを真ん中に置き、あがった。
その男はスーツではなく、軍隊に所属しているような戦闘服を着ており、筋骨隆々で厳つい体をしていた。
部屋の中には、細い体格の部下の男、きつねのような上司、用心棒らしき男の3人がいた。
「あそこのボスに感づかれたとなれば、確かにヤバいな。俺たちの存在が露見するのも時間の問題だ。一刻も早くやることやってイタリアを出るぞ」
「は、はい…!」
部下の男は窓ガラスを打ち破って、外に出た。
「おいおい。ここ7階建てだぞ。たまにはドアから行けってんだよ」
上司の男はトランプをAからKのハートからクローバーまで綺麗に並べて、ケースにしまい、本棚の端に差し込んだ。
ポケットから葉巻とライターを取り出して、火をつけた。
「しかし、今までいい儲けをさせてもらったからな。墓作りくらいはしておくか」
「おい。ここでたばこを吸うのはやめろ。俺の筋肉に響く」
「すみませんねェ~…」
火を消して、それぞれが持ち場に向かった。
1人は修道院へ。もう1人は、ベネツィアへ。