第1章 序章
某日 真夜中。
「ハァ…ハァ…ハァッ…!」
人気のない暗闇の最中。
男はただ、走ることだけを考えていた。
死にそうなくらい息を荒くして魔の手から逃れようとする。
しかしこんな闇の中で、手を差し伸べてくれる者は誰もいない。
「助けてくれ」と大声で叫んだとしても、きっと
・・・・・・・・・・・・・
自分を追っている後ろの悪魔にしか聞こえないだろう。
ガシャン!
フェンスの行き止まりが逃げ道を遮る。
何とかよじ登ろうと足をかける。
ザッ
「!」
背筋が凍り付くような寒気がした。
後ろをそっと振り返る。
もうそこには、追手がいた。
赤と大きい黒目が入り混じった瞳の青年だった。
暗闇に溶け込むようにして立ち潜んでいる。
一目見るだけで暗殺者と分かる風貌だ。
男は手を挙げて弁解する。
「ま、待ってくれッ!許してくれ!アンタたちの組織に危害を加えるつもりはッ…!」
ブシャアアッ!
「!?」
急に喉の奥から痛みが走る。
熱い液体が口から吹き出た。
「な…なんだこれは…か…体がッ」
足の裏から全身へ脱力感が込み上げる。
バタリ
その場でひれ伏した。
「馬…鹿…な……」
もう声を上げることさえ出来ず、次第に意識が遠のく。
心臓の鼓動は無くなり、追手はそれを確認する。
その青年の名前は、リゾット・ネェロ。
暗殺チームを率いるリーダーである。
裏社会で生きる者として
今夜もまた、組織の手足として、命を奪った。
「……俺自身はお前には何の恨みはないが、お前のように、組織に害をなす者を消すのが、“俺たちの任務”だ」
リゾットはターゲットが死んだのを確認してから、その場を立ち去った。
一方、その頃……