第7章 宴
光秀さんが去った後、自分のご飯を早々と食べた私は椿のところへ遠征しに行った。
「椿」
「あ、絢!どうしたの?」
私は辺りを見回して言った。
「そろそろ帰らない?皆酔っ払ってきてるし」
椿も下座の方を見やる。
「…ほんとだ」
すると椿の隣に座っていた家康さんが言った。
「それが賢明な判断なんじゃない。……なんかあったら迷惑だから部屋まで送るし」
(え、何があった)
第一印象があまり良くなかったせいか今の家康さんの台詞がとてもレアなものに感じられた。
「じゃあ帰ろっか」
そう言って椿は信長様の前まで出ると一礼をして言った。
「私と絢様ですが、慣れぬ場所故少し疲れてしまったのでお暇させていただいてもよろしいでしょうか」
信長様は頷いて「よい。大義であった」と言った。
隣にいた秀吉さんもにこやかに頷いて「お疲れ様だったな」と労ってくれた。
(秀吉さんが優しすぎる…何があった…)
武将たちの対応に私が馴染めていないという現象が起きているような気がするが、まぁもう退室するから関係ないだろう。
「…行こう」
家康さんがぼそりと呟いてそそくさと出ようとしたのを信長様が引き留める。
「家康」
「…何ですか」
家康さんはわりと(大分)嫌そうな顔をして言った。
「貴様の退室理由は聞いておらぬが」
「…姫君方を部屋まで」
すると信長様はふん、と笑って言った。
「最初から言えば良いものを」
「…」
家康さんはため息をついて信長様をちらりともう一度見たあと「では」と言って私達の前に行き、さっさと部屋を出て廊下で待ってくれていた。
私達が部屋を出る前に秀吉さんが言った。
「ちゃんと寝るんだぞ。おやすみ」
「「はーい」」
そう返事して私と椿は部屋を後にした。