第7章 宴
信長様がそう言うと同時に襖が開き、お膳を持った女中さんたちが一斉に入ってきた。
(なるほど、だから人の並び方が部屋の壁に沿う感じだったのか!)
お酒も運び込まれ、さっきまでの厳かな雰囲気はどこかへ消え去り、広間が一気に宴会場に変わった。
私の前にもお膳が置かれる。
秀吉さんが杯を片手に取りながら言った。
「絢も楽しめよ」
「はーい」
向こう側でも椿が政宗に話しかけられて。
私は小さな声で秀吉さんに尋ねる。
「政宗さんって人懐っこいんですね」
「まぁそうだな。伊達軍は結束力が強いと言われているのもあいつの努力の結果だろうしな」
「へー」
こんな感じで私と秀吉さんが話していると秀吉さんに酌をしたいという人がぱらぱらやってきた。
「ごめんな。ちょっと待っててくれ」
そう言って秀吉さんは酌を受けたり話したりし始めた。
私は話す相手もいなかったので一人お膳を美味しくいただいていると声をかけられた。
「失礼、先の戦の参謀は絢姫様だったのですね」
声の主は馬に乗せてくれた人だった。
「!こんばんは、今日はありがとうございました」
「姫様こそ窮屈でしたでしょうにご同乗下さり有り難う御座いました」
「いえいえそんな…!そうだ、もし良ければお酌をさせていただいても?」
私はそう言って秀吉さんの近くにあったとっくりみたいなものを手に取った。
「もちろんで御座います…!有り難き幸せ」
そう言って男の人がすっと杯を差し出したので私は溢さないようゆっくり注いだ。
男の人は杯の中身をぐいっと飲み干すと一例をして他のところにまわっていった。