第7章 宴
(昼にあんな別れかたをしたもんだから気まずい…)
目を合わせなくていいのが救いだった。
お辞儀をして次のお声かけを待つ。
心臓がばくばくしていた。
「絢。褒美は何が良い」
「何でも…褒美を貰うようなことをしていませんし」
私がそう言うと信長様はふん、と笑って言った。
「考えておけ。後日くれてやる」
「ありがとうございます」
そう言って雰囲気的なものを感じ取り、私は自分の席に戻った。
──
それから戦で一隊の将を仕留めた人などに褒賞が与えられていった。
「最後に、椿姫」
「はい?」
(えっ?)
椿が驚いた顔をして反射的に返事を疑問系でしていた。よほど動揺しているんだろう。
ちなみに私もびっくりしている。
家康さんが椿にそっと何か言っていた。
椿は頷くと信長様の前に進み出て礼をし、顔を伏せた。
「貴様、昼の城下で浪人に接触し、店主を助けたそうだな」
「いえ、私は何も」
椿は即答する。
(待って、そんなことあったんだ)
私はそういえば椿から話をまだそんな話を聞いてなかったことを思い出した。
そこで家康さんが言った。
「俺が見廻りの奴らからそう報告を受けて信長様にもそう報告したんだし…あんたは素直に自分の功績として受け取っていいんじゃない」
椿は小さく頷いた。
信長様はそれを見て言った。
「では貴様まだ褒美を決めておらぬのだろう。後日伝えるが良い。下がれ」
「ありがとうございます。失礼致します」
椿がそう言うと信長様は指をぱちんと鳴らして言った。
「待たせたな。では宴といこう」