第7章 宴
そう言われると三成さんは襖一枚をすべて開け放ち、その隣で片膝をついたまま言った。
「どうぞお入りください」
私達は頷いた。
まず椿が入室した。
椿は堂々と振る舞えていて、とてもお姫様に見える。
次に私も広間に足を踏み入れた。
まず人の多さに驚いた。
ざっと200人はいるのではないかと思う。
私達の入室によって広間は多少ざわついていた。
「やはり戦で髪を切られたと言うのは本当だったのか」
「おいたわしい…」
「勇敢な姫君もいらっしゃるものだ」
「さすが織田の姫ということでしょうかね」
(皆好き勝手言ってんな…)
そんなことを思いながら秀吉さんが案内してくれた信長様がいるところの一段下の中座の右側の場所に座った。
三成さんは後から入ってきて中座に座った。
三成さんが座ったのをちらりて見やると信長様はぱちんと鉄扇を鳴らした。
するとその場は静まり返る。
「紹介する」
信長様はこちらを見て言った。
「右に居るのが織田に所縁のある家の姫、絢。左におるのが行儀見習いに来ている遠縁の姫、椿だ」
そう紹介されてから私達は頭を下げる。
「よろしくお願いします」
「よろしくお願い申し上げます」
すると信長様を除いたその場にいる皆が礼をした。
少し間を開けて信長様は言った。
「では先の戦で良い働きをしたやつに褒美をやる。…絢」
「…は?」
名前を呼ばれるとはつゆほどにも思ってなくて間の抜けた声が出てしまう。
すると隣にいた秀吉さんが小さな声で「信長様がお呼びだぞ。御前へ」と言った。
よくわからないまま私は信長様の正面まで周りの圧で動かされた。