第7章 宴
椿は煮え切らない様子で言った。
「うーん…あらかた決まったけどこの二つのうちどっちがいいか悩んでて…」
そう言って椿は私のが並べてあったところと反対側を指さした。
(なるほど…)
椿が指定された打掛は紫が基調のものだった。
片方はかわいらしい色合いで、もう片方は大人っぽい感じだった。
「なんか椿には右のやつが似合う気がする」
私は大人っぽいやつの方を指差した。
「じゃあこっちにしよっかな!ありがとね」
椿は紫と白のコーデを自分の方に引き寄せた。
「お決まりになりましたか?」
そう私たちに尋ねながらふみさんが髪飾りらしきものを持ってきた。
「決まりました!待たせてしまってすみません…」
「いいんですよ、椿様が懸命にお悩みになって決めたのですから私も楽しみです」
そのとき椿の部屋の方から声がかかった。
「失礼します。衣装はお決まりになりましたか?」
声の主はさくらちゃんだった。
「さっき二人とも決まったよ」
私がそう言いながら決まった組み合わせを指さすとさくらちゃんは目をきらきらさせて言った。
「こちらのお衣装ですか!色や模様の組み合わせが素晴らしいですね…!」
椿は照れ臭そうに笑うと言った。
「誉めてもらえて嬉しい…!ありがとう、さくらちゃん」
「いえいえ、流石椿様ですよ。ではお着替えいたしません?あと一刻ほどで宴でございますよ」
(あと一刻ということは…六時辺りか。早いねぇ)
そんなことを思いながら私は「そうしよう!」と返事をした。