第7章 宴
ふじさんとりんさんにお礼を告げてもう一枚着物を羽織り、部屋に戻ってきた。
部屋ではふみさんが待っていた。
「おかえりなさいませ。お湯はいかがでしたか?」
「とっても気持ち良かったです!」
ふみさんはにっこりと微笑むと言った。
「それはようございました。お隣で椿様がお着替えなさっておりますから絢様も着物をお選びくださいませ」
「はーい」
私はそう返事をしてがらりと襖を開ける。
「椿、入るよ!」
中では椿が3パターンくらいの組み合わせを並べていた。
「ちょっと、私が着替えてたらどうすんの」
椿は呆れた顔をして言った。
「女子しかいないし大丈夫でしょ」
私がへへっと笑って言うと、
「そういう問題じゃないでしょ」
とため息をつきながら椿が言った。
でもこういう場合椿はさほど怒っていない。
「ごめんて」
「はいはい」
やっぱり全然怒ってなかった。
「今指定された打掛に合う組み合わせを考えてたんだけど、絢はどれがいい?」
そう言って椿は並べてあるやつを指さす。
「え、私のやつも考えてくれたの?!」
「あたりませでしょ」
相変わらず椿にセンスの良さを発揮されてお洒落など何もわからぬ私は頭を悩ませた。
「う~ん」
しばらく悩んで一番惹かれたものに指をさす。
「これがいいな」
指定された打掛が濃いピンクで派手なデザインなのに対してとっても淡いピンクの控えめなのもいいし、袖口からちょっと見えるであろうインナー的なやつが主張しすぎない黄色なのも良いなと思った。
(この時代の帯って細いんだ…)
茶道の先生が着ているような着物を予想していた私はまじまじとセレクションを見つめる。
暫く服とにらめっこしてからはたと気付いて言った。
「椿はどうするの?もう決めた?」