第7章 宴
座椅子の横には何やら小物がいっぱいあった。
1つは香油なんだろうか。とってもいい匂いがした。
りんさんが「失礼しますね」といってやはり香油だったものを手に少量取り、馴染ませてから手で私の髪を鋤き始めた。
何の香りだろうか。
よくわからないけど本当にいい匂い。
りんさんは軽く頭皮のマッサージもしてくれた。
(どうしよう、眠くなるくらい気持ちいい)
私は押し寄せる眠気をはねのけながら言った。
「やっぱり普通のお姫様って綺麗な長い髪をお持ちなんですか?」
するとりんさんは少し黙ったあと言った。
「私はお髪の短い方ははじめて見ました」
まぁこの長さはこの時代あり得ないものなんだろうな、と思いながら相槌をうつ。
「どうして短いのかお聞きしても…?」
とさくらちゃんがおそるおそる尋ねた。
するとふじさんの方からえも言えぬ威圧感が放たれ、さくらちゃんは黙ってしまった。
「特に深いアレはないですよ。邪魔だったから切ったみたいな」
すると一瞬場が静まり返る。
「姫様、大変な思いをされたんですね…」
とりんがいたわしげに言った。
(なぜその流れに)
「まぁ大丈夫ですよ」
そう言って私は後ろを振り返る。
「そろそろ大丈夫ですか?りんさんお上手すぎてこれ以上されると眠くなってしまうので…」
正確には寝ちゃうので、だがそんなことを言うわけにもいくまい。
「ありがとうございます…!ではご自身でも具合をご覧になってください」
そう言って鏡を渡される。
鏡で見ると私の短い髪はCMレベルでツヤツヤだった。