第1章 出会い
眩暈が収まり、意識が戻ってくるのがわかる。
右手の暖かさで椿と手を繋いでいることを思い出す。
「椿!」
「絢っ!」
私達は互いの無事を確認しあった。
が、炎に囲まれていることを悟り、とっさに辺りを見回した。
「あ」
すると、袈裟らしき物がひらりと翻るのが見え、杖を持ったお坊さんが出ていってしまった。
「待って…!」
私は急いで後を追おうと振り返って椿を見ると、椿はもう一人、甲冑を纏った男の人の傍らに座り、ハンカチを取り出していた。
「絢、この人助けなきゃ」
「そうだね…!と、とりあえず起こそうっ」
私がそう言うと椿は男の人を揺さぶり起こした。
「すみません、起きてください!火事ですよっ!…っもう、貴方死にたいんですか!?」
すると男の人がゆっくり目を開く。
「…っ」
「「起きた!」」
男の人は火に囲まれているにも関わらず、悠々と私達に聞いてきた。
「貴様ら、何者だ」
「っ今はそんなことどうでもいいから早く逃げますよ!」
私はハンカチを口に当てながらお坊さんが消えていった襖を開けた。
椿は謎に偉そうな男の人にハンカチを渡す。
そして私達は顔を見合わせて言った。
「「こっちですっ!」」
私達はどうにか男の人を代わる代わる引っ張りながら燃えている廊下に崩れてくる天井を避けながら和風の建物の中を疾走し、なんとか外に出た。