第1章 出会い
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秀吉は門の前で待機していた警備隊長に歩み寄りながら声をかけた。
「御苦労。何か問題があったのか?」
「秀吉様…!実は茶会のお客様がお泊まりになっているところに何かありましたようで…」
「詳しいことはわからないんだな。…わかった、三成を呼んでくれ!」
そう秀吉が傍らにいた足軽に告げるとその足軽は三成がいる方へと走っていった。
しばらくして三成がやってくると秀吉は告げた。
「三成、俺は隣村の調査に行ってくる。御館様に何かあってはいけないからな。少し留守を頼む」
「承知致しました」
三成に留守を任せ、秀吉は五人ほどの供を連れて近くの村まで駆けていった。
三成と警護隊の長が秀吉の調査に伴い空いてしまった警備の穴を埋める相談をしていると、突然、異変があらわれた。
「石田様!配置してあったはずの裏門の見張りが居りませぬ!」
「っ!早急に御館様が御無事か確認にいってくださ…」
その時、三成の声を遮るように本能寺から炎が勢いよく燃え上がった。
「なっ…!…秀吉様にご連絡を!今すぐ!」
「はっ」
三成が中に入ろうとするも入口が燃えているため入れない。
唇を噛みながら三成は指示を飛ばした。
「火消しを!」
「「はっ」」
─本能寺内部─
燃え盛る炎のなか、一人の袈裟を纏った男の影が映る。身なりは確かに僧なのだが、僧と言うにはあまりにも憎悪に満ちた顔をしているのだ…
男は一番奥の部屋の手前側の襖を開け放った。
部屋には柱にもたれ掛かり眠る男が一人いるのみ。
「漸く…」
そう呟く顔は憎しみからだけではない感情で歪んでいる。
男は手にしている杖を両手でつかみ、仕込ませてあった刃をあらわにした。
その時だった。
辺りに一瞬、炎とは違う光が、場を埋め尽くした─