第7章 宴
ちゃぷん…
「絢様、お湯加減は如何でしょうか?」
「……最高です…」
疲れきった私はそれだけ返事をした。
精神的な疲れがあまりにも凄くてお風呂に心を救われている状況だ。
「それは良かったです」
─
──
嫌々向かった浴室には女の人がまた2人いて私を待ち構えていた。
「さ、絢様、お体を流しますからお着物をお脱がせしますね」
お、が多いきがする…。
いや、そんなことはどうでもいいんだ。
お風呂は一人で入りたい!
「さくらちゃん、ちゃんと自分でやるから一人で入りたいなぁ…なんて」
すると他の女中さんふくめさくらちゃんがぶんぶんと頭を振る。
「滅相もございません、私達がきちんと致しますからお気に掛けなくて大丈夫ですよ!」
「え、いや、だ、大丈夫ですから」
──
─
と互いに一歩も譲らず、ついに私が折れて色々されて今に至る。
基本浴室は室内だったが、客人用の小さな御簾で囲われた露天風呂があった。
(この時代に露天風呂あったんだ…)
私は湯船のなかでうーんと伸びをする。
何せ裸体を見られた上にエステか!みたいなこともされたせいで体はぴっかぴかであるものの気持ちは沈んでいる。
皮肉なことに私はわりと単純なのでお風呂にテンションが上がり、歌いたくなってしまった。
何せ私は歌うことが大好きであるため、お風呂ではいつも大音量で歌ってたびたび母親に怒られるのだ。
私はすぅっと息を吸って旋律を声に乗せていった。
「~♪」
最初は小さな声だったのが後半になるにつれてここが安土城の露天風呂であることを完全に忘れた私はいつも通り歌ってしまっていた。
私と椿は学年でも歌が好きで上手いと友人たちから言われていて、ふたりでよく屋上でデュエットしていたものである。