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〈イケメン戦国〉紫陽花の咲く季節

第6章 天主


「絢とは、あやつのことよな?」

私はこくこくと頷いた。
このとき我に返っていれば信長様の唇が微かに弧を描いていたのを拝めたかもしれない。

「成程。あのじゃじゃ馬ならば致しかねぬな」

出会って2日でじゃじゃ馬扱いされてる絢って…

私は思わずくすりと笑った。

「まぁ良い。初めに行動を起こすのが一番難儀でありなかなかに出来ぬことだ。貴様にも褒美を取らせる」

「も、って…絢は何かしたのですか?」

「ああ。此度の策士はあやつよ」

策士って…。
え、絢が作戦考えたの…!?

私は驚きから目と口を丸くしたまま暫く固まる。

すると信長様がくく、と笑って言った。

「貴様ら顔で物を語りすぎだ。全く、これでは間者と疑いようがないな、光秀?秀吉?」

信長様が私の後ろに向かって語りかけたものだから私は勢いよく振り返って光秀さんと秀吉さんを発見してしまった。

(いつからいたの?!)

私はまたもポカーンとする。

秀吉さんは済まなそうに、光秀は堂々とにやにやしていた。

「済まない、光秀を追いかけてきたら信長様に言われるまで出るなと…」

(そういえば秀吉さんは信長様信者だった…)

「はて、何の事だ?俺は今しがた来たばかりだが」

「嘘をつくな!椿が混乱するだろう?!」

(光秀さんは悪びれようよ…)

「ともかく」

信長様の一声で二人とも黙る。

「こやつらが間者の線は薄れた。違うか?」

「「異論ありません」」

あんなに仲が悪いのに返事のハモり具合がすごい。

というか、ちょっと待った。

「秀吉さんまだ疑ってたんですか」

私は軽く秀吉さんを睨む。

すると秀吉さんは慌てていった。

「いや、違うんだ。お前のことは信じていたが万が一のことがあってはと…」

私は小さくため息をついた。

「冗談です。秀吉さんは責任者ですからおいそれと得体の知れない人を信じるわけには行かないですよね」

私がそう言うと秀吉さんは少し驚いた顔をした。

後で光秀さんが「ほう…」と面白そうに呟いた。
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