第5章 帰城
「っ!!!!!」
体が考えるよりも先に拒否し、降り方も知らぬくせに反対側から飛び降りた。
信長様はじっと一部始終を見ていたが椿をちらりと一瞥すると羽織を翻して言った。
「宴には顔を出せ」
「…はい」
(さすがにまずかった…よね)
私はため息をついた。
「絢!」
椿が駆け寄ってくる。
「ただいま!椿めっちゃ綺麗だね!??びっくりしちゃった」
「ありがとう…!勝負事かと思ってつい…。それより、怪我はない?部屋で休も」
そう言って椿は城の方へ歩き出す。
私は隣を歩きながら言った。
「怪我はしてないけど…、それはありがたい申し出だ!話したいことがいっぱいあるの」
ほんとにこの一日の間に色々ありすぎて自分でも驚いている。
「私も!なんか色々あって」
椿もなかなかに色々あった表情をしてるなぁ。
そこで一旦私達は靴を脱いで城にあがった。
「まだ夕餉、じゃなかったね。宴までは時間があるからゆっくり話そ」
「そうだね」
椿はすいすいと城のなかを進んでいく。
「あれ、城内もうわかるの?」
「うん。何だかんだで働かせてもらって」
たしかに椿は昨日よりも身軽な格好をしている。
「まじか。すごいね」
「絢に置いてかれたからねー!暇だったのよ」
そう言って椿はへへっと笑った。
「ごめんて。まぁでもお互い何事もなくて良かった」
「たしかに。命の危機は何回か感じたけど…」
「えっ、椿も!?」
私がそう言うと椿も驚いたように言った。
「えええ!絢も!?」
「「詳しく」」
と私達は同時に言っていた。
椿はにっと笑って言った。
「こうなったら走って部屋帰ろ!あ、秀吉さんに見つからないようにね」
「豊臣さん?なんで?」
「廊下走ってたら怒られるから!」
「そりゃまずい!」
そう言いながら私達は部屋まで走って帰った。
結局豊臣さんにバレていたのはまた別の話…