第5章 帰城
戦から生きて帰ってきたというのにこんなにあっさりしてていいんだろうか?
まぁいいだろう。私は実際終わったも同然な戦場にしか出てないしほとんど何もしてないんだから。
考えたところで何も変わらないしね。
ちゃんとした天井とご飯があるところに帰れたのだから万々歳だ。
わりとお出迎えの人達がいて少しびっくりする。
(さすがってとこだね)
「お館様ー!!!!!お帰りなさいませ!!!!!」
まだつかぬうちから誰かが叫んでるなぁと思ったら豊臣さんだったり…
とか言ってるうちに着いてしまった。
自分の名前を呼ぶ声が聞こえる。
「絢!!!」
この声は…
「椿!!!!!!」
私は声の主に向かって手を振った。
信長様は馬を止めると言った。
「皆御苦労だった。本日は休め。夜に宴を開くが、参加は自由にする」
「「「はっ」」」
豊臣さんが宴の準備をするよう厨に人をやっているのが見えた。
信長様がひらりと馬から降りる。
(あんな重装備でよくこんなに身軽に動けるよなぁ)
そう思いながらぼうっと眺める。
信長様が私に向かって手を差しのべた。
「降りろ」
「あ、はい」
私が信長様の手を掴もうとした瞬間、
─ドクン
一瞬、信長様の手が血に濡れているように見えた。