第4章 城下
気付いたら朝だった。
私は布団のなかにいた。
(いつの間に…!?)
昨日は結局寝れなくて月明かりと蝋燭の光を頼りに本を読んでいたはずなんだけど…
本はご丁寧に頭の横に置いてあり、なにやらメモ書きみたいなのが挟んであった。
「えっと、縁、…で…て…風…く、ぞ?」
あまりに達筆で読めない。
かろうじて漢字と「て」とか「く」がフィーリングでわかるくらいだ。
私はもそもそと布団から出て横に置いてあった着替えにありがたく袖を通した。
(あ、打掛が紫陽花の色だ)
紫陽花の、このあおともあかともとれない紫の感じがとてもすき。
浴衣の着付けと同じ要領で着替える。
着物の帯は太いものだと思っていたがどうやら違うらしい。
昨日それとなく聞いたが身分の高い人は打掛を身に付けるんだとか。
昨日朝の着替えは手伝ってもらわずにやると言ったところ、女中さん達が一通り隣の部屋に用意してくれたことを思い出し、絢の部屋と反対側の襖を開ける。
(うわぁ…!)
控えめにいってビックリした。
カラーバリエーション豊富な小袖と小さな箪笥には同じく色々ある帯。
どうやってこの中から選べというのか。
というか申し訳なさすぎる。働こう。
そこでふと思い出す。
(紫ってたしか昔だと格式が高めの色だよね…?)
急に自分が試されてるような気がして、俄然やる気がわく。
朝御飯食べるときまで打ち掛けを羽織っていれば文句は言われまい。食べ終わったら働こう。
私はそう決めて早速コーディネートを決めていく。
主役は打ち掛けだけどそれに頼りすぎないように気を付ける。
(この時代にあるかは知らないけどやっちゃえ)
私は2枚目の襦袢に赤紫を選ぶ。
また帯も同じ色に揃えたくてさつまいもの色を選ぶ。
(もうちょい赤めが良かったけど…)
私は襦袢が下着であるのをガン無視し、小袖の衿と少しずらして見えるようにする。
下着は別に夜洗って干して本を読んでいた間に現代のをタオルに包んでいたからそれを着たらOKだし。
私は帯を身に付け、打掛を羽織り、化粧台らしきものに付いている鏡で己の姿を確認する。
(よし)
鞄から腕時計を取りだし、時間を見ると8時を指していた。
腕時計を着ける。
するとちょうど襖の向こうから声が掛かる。
「姫様、おはようございます。朝餉をお持ちいたしました」