第3章 初陣
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目が覚めたら私は天幕で寝かされていた。
(夢、じゃなかったみたいだね…)
相当うなされたのだろう。ひどく汗をかいていた。
「起きたか」
信長様の声がして私は思わずびくりとした。
返事をしなければ。そう思ってもうまく声がでない。
私は信長様の方をかろうじて向くと起き上がって小さく頷いた。
信長様は私の方を見たわけではないのに「そうか」と言ってこちらを向いた。
「貴様はよく役に立った。帰城した後褒美をやる。考えておけ」
私はまた頷いた。
信長様は私が頷いたのを見て立ち上がり、天幕から出ていった。
(それだけ言うためにここにいたのかな…?)
そうぼんやりとした頭で思った。
とりあえず状況を知るために外に出ようと思った。
天幕の外に出ると戦の時に馬に乗せてくれた人が私を見るなり土下座をした。
「姫様、戦の最中とはいえ織田の姫様を落馬させてしまい申し訳ございません。かくなる上は己の命をもって償いさせていただきます…!」
「え、ちょっと待って!」
私は焦って言った。
「あ、あれは私が勝手に落ちただけなので…!死んじゃだめですよ!」
「姫様…」
すると信長様がいつの間にかこちらに来て言った。
「絢もこう言っている故、不問にしてやる。貴様は今後の働きでこの分を取り返せ」
するとその人は感激したように言った。
「はっ、御慈悲に感謝致します…!」
(うーん、なんかいちいちリアクションがすごいっていうか…)
そう思いつつ、削られていた精神を思いがけなく復活させられたので心のなかで感謝を述べた。
左手を確認すると時計の針はは23時を指している。
(まだ三時間しか経ってないんだ…)
戦の終わりの早さに驚きつつ自分がそんなに気を失っていなかったことがわかり、安心する。
「今宵は此処で夜を越す。明朝に出立する故貴様も支度をしておけ」
信長様に腕時計がばれたらまずい。
私はとっさに袖で時計を隠し、「はい」と返事した。
信長様はまた私のことを帰にする素振りもなく去っていった。
私も天幕に戻ったけれど、目が冴えて全然眠れなかった。