第3章 初陣
凍てつくような声だった。
戦はまだ終わっていないはずなのに辺りは静まり返っていた。
誰も動いていなかった。
いや、動けなかった。
(これが、この人が、かの織田信長…)
信長様の背中が遠くに見える気がする。
大将の大名はすっかり怯えきってきた。
信長様がゆっくりと刀を抜く。
顔は見えなかったけど信長様が笑った気がした。
「俺に歯向かわんとしたその心意気だけ認めてやる」
そう言って大名の髷を切り落とした。
(殺さないんだ)
私はそうぼんやりと思った。
信長様は織田兵に言った。
「城に火を放ち、妻子は捕らえよ!家臣共もだ」
信長様の指示で怯えきった女の人たちと子供達が兵士に引き立てられてきた。また、家臣と思わしき人たちも俯きながら出てくる。
火矢が城に向かって放たれ、城は燃え上がっていた。
信長様は全員揃ったのを見ると、
大名の首を切り落とした。
私はそこで意識を失ってしまった。
椿は来なくて正解だったな、とぼんやり思いながら。