第3章 初陣
そして戦は始まった。
両端を銃や弓で攻撃し煽動。退却するときに柵や槍をさして深入りした敵の機動力を封じる。
予想通り左の方が騎馬兵の数が多く、相手方は織田方の兵が五百だとたかをくくっているためか予想通り深追いしてきて抜け出れなくなった。
信長様は迎撃の報告を受けるや否や馬に跨がり、本舞台三百は出陣した。
私は最後尾、信長様の真後ろらへんで将兵の馬に同乗させてもらった。
人々の怒号や刃の合わさる音が聞こえてくる。
疲れだろうか、恐れだろうか。体が動かなくなってしまった時に馬が急に止まり、私は落馬した。
痛い…。
だが馬が小柄で落ちたのが平野だったのが幸いし、たぶん打ち身あたりで済んだ。
一番後ろだと思っていたがいつの間にか軍の中心部にいた。
最前線は今城門にたどり着き、突破を試みているという。
まだ出陣準備段階だったのだろう、城門はさほど強固ではなく、どこから仕入れたのかわからないけど大砲によって今にも壊れそうだった。
そんなことを思っていると矢がこちらに飛んでくるのに気付く。
(あ、私死ぬかも)
将兵の叫びが遠くに聞こえた気がした。
私は目をつむった。
が、いつまでも痛みは訪れない。
恐る恐る目を開けると信長様が目の前に居た。
「貴様、怪我は」
私は声を絞り出して言った。
「…ありません」
私がそう言うと信長様はふんと笑い、敵軍に向かって言った。
「貴様らの相手はこの信長だ!ゆめゆめ忘れるでないぞ!」
そう敵兵に言い放ち、信長様は最前線に躍り出る。
それを見た敵兵は手柄を立てようと次々に信長様に切りかかるも返り討ちにあい、地面に伏していた。
「お、お助けを…」
怯えた敵兵の一人が信長様に命乞いをする。
が、しかし信長様は迷いなくその人を切り捨てた。
「お、鬼だ!」
「助けてくれ!」
そう逃げ惑う敵兵を織田軍はただただ切り伏せていく。
城門もいつの間にか突破され、相手の大将が出てくる。
信長様は大将をすぐさま織田兵で囲むよう指示し、怯える大将に向かって馬を進めた。
大将は完全に怯えていた。
「城も妻子も家臣も差し出しますから、どうか命、だけはお助けを…」
信長様は鼻で笑って言った。
「貴様の命はそれほど価値のあるものなのか?」