第3章 初陣
陣幕の方から人が駆けてきて言った。
「皆の者、信長様よりお達しだ!半刻後に出陣、それまでに備えよ!」
「「応!」」
そう返事をすると兵達は一斉に動き始めた。
私は何か手伝えることがないか辺りを見回してみるも手伝えなさそうだなと思うと皆さんの邪魔にならないよう天幕に戻った。
今から戦争が始まるという実感が少しだけ伴う。
(信長様は私達の時代だと魔王とかわりと怖い人呼ばわりされてるけどそうでもないと思うな…)
私はそう思いながら一応乗馬のための袴やら何やらを身に付けていった。
まぁ慣れない着物をさっさと着れるはずもなく、たいぶ時間がかかってしまったが。
一通り着替え終わって時計を見る。
(げ、あと15分)
どれだけ着替えに時間がかかったんだ私、とか思っていると天幕の外に人影が写った。
「入るぞ」
人影と声の主は信長様だった。
「じき兵を出す。貴様は俺と陣幕に居ろ」
「はい」
正直戦場には行きたくなかったのでこの指令はありがたかった。
だが天幕の外に出ようと思っても足は動いてくれなかった。
今までびっくりすることしか起きてないからか順応はできると思ってたのに…。
(こわい)
私は今になって恐怖に直面してしまった。
信長様はそれを見抜いたのか私にまた一歩近付いて言った。
「案ずるな。折角拾った幸運の守りをやすやすと手放しはしない」
(モノ扱い、か)
恐怖のせいか消極的な考えしかわかない。
でもこのまま立ちすくみ続けたら何をされるかわからないというのはわかる。
私は無言で信長様のところへ歩み寄る。
信長様は私を見下ろした後何も言わず陣幕へ歩き始めた。
私はただ黙ってついていった。