第3章 初陣
信長様の唇が弧を描く。
「それが本当だという確証は」
「ありません…私の勘なので本当に合っているかはわかりません」
今更ながらとんでもないことを言ってしまったかもしれないと思っていたが信長様は相変わらず口角を少し上げながら言った。
「面白い」
信長様はくくと笑って言った。
「ここからは各小隊の将と詰める。貴様は下がれ」
「は、はい」
私は椅子から立ち上がって「失礼します」と言って陣幕をあとにした。
人の勘を戦争するときに信じられるなんて信長様はすごいんだなぁと思いながら私は自分の天幕に戻っていった。
絢が陣幕から遠ざかったのを確認すると信長は絢が出ていったのと反対側を向いて言った。
「光秀、貴様はどう見た」
すると光秀は陣幕の角からするりと幕内に入って言った。
「おや、ばれていましたか」
「戯け。最初からいた奴が何を申しておる」
そう言うと信長は地図に目を戻す。
「なかなかに面白いですね。鋭い。あれが教育されていないものであれば大した資質だ」
「貴様もそう思うたか」
信長は愉快げに目を細めた。
「光秀、策および編成を各隊の将に伝達する。貴様は右に行け」
「承知」
陣幕の端がひらりとはためく。
そこにはもう光秀の姿は無かった。