第3章 初陣
「正気ですか???」
私は思わず信長様の顔を覗き込んだ。
「無論だ。手伝いがしたいのであろう?」
「まぁ、そう言いましたけど…」
私がそう答えると信長様は話を続けていく。
「こちらの兵は五百、向こうが千二百。兵力にで不利がある。よって夜に奇襲を掛ける」
「は、はい」
「先程斥候から入った情報によると相手の内訳は歩兵千と騎馬兵二百」
「…圧倒的に不利じゃないですか!」
私は思わず立ち上がって言った。
「無論、向こうもそう思うだろう」
「どういうことですか?」
信長様は紅い目をぎらりと光らせて言った。
「戦の勝ち負けは兵力だけではない」
私は圧倒された。
(これが、天下を取った織田信長…)
信長様はからかっているわけではないなとその目を見て思う。
ならば私も真剣に対応しよう。
「わかりました。ですが、私は兵法とかよくわからないです」
「だろうな」
「じゃあどういうつもりで…?」
私がそう尋ねると信長様が碁石をパチリと置いた。
「敵の配置だ。碁石一つあたり二百とする」
「はい」
信長様は六つ目の石を白の上に置いた。
「将は城だ」
「えぇ!」
自分だけ城に籠るなんて情けないなぁ。
私はそう思いながら改めて地図に目を通す。
敵の陣は城を原点として左:右=1:2に配置してあった。また、騎馬隊は城をへの字に囲んだときの右一番後ろ。つまり騎馬隊は明日もし昼間に戦をするんだったら数の多い歩兵でこちらを疲弊させた後、仕留めるつもりだったんだろう。
「兵隊さんが少ないので少ない兵で両端を攻撃して意識を反らし、その後この城門の正面左右の二陣の間をなるべく早く攻めあげ、左右の援護が来る前に城門を突破したらいけるかと」
信長様はにやりと笑って言った。
「面白い。それでいく」
「へ!?」
「して貴様、編成はどうする気だ」
信長様は楽しそうに私に尋ねた。
「えっと、端には弓兵や銃兵を多目に使った方がいいかと。数は最大百で、ちょっと嫌な予感がするから左が少し多くていいかも」
「嫌な予感だと?」
「うーん、なんか右のどこかがダミーな気がするんですよ」
「だみい、とは何だ」
信長様は眉を少しひそめて尋ねた。
「偽物とか見せかけって意味です」
「では貴様は敵軍の配置のどこかしらがだみいだと申すのだな?」
「はい」