第3章 初陣
夜8時頃、どうやら目的の場所に着いたようだった。
私は馬から降りたあと、先に張ってあった天幕に案内された。
信長様は少し離れた隣の天幕にいるらしい。
(ひとりで使っちゃうのは贅沢なんじゃないかな…)
そう思いなにもしないよりは手伝おうと辺りを見回した。
兵達は天幕を張ったり武具の準備、晩御飯の配給、鎧の手入れなどをしていた。
私は近くのただの足軽よりは偉そうな兵の人声を掛けた。
「すみません、何かお手伝いできることはありませんか?」
するとその人は慌てて言った。
「姫様に手伝っていただくなど恐れ多い…、お疲れでしょうからお休みになってください」
姫?あぁ、そういえば信長様がそんなことを言ってた気がしなくもない。
暇だからとりあえず信長様のところへ行こう。
何か仕事をくれるかもしれない。
私は信長様がいるらしき陣幕の方に歩いていった。
(織田の紋って何のかは知らないけど花なんだ…意外)
私は陣幕の前でじーっと織田の紋を見つめていた。
(そういえば旗も同じやつが書いてあったな)
そんなことを思っていると陣幕の中から声が掛かった。
「何をそこで呆けておる。用があるなら入れ」
「は、はい!」
(なんでわかったの…!?)
私は「失礼します」と言って小走りで陣幕の中に入った。
「何の用だ」
信長様は地図から目を離さずに聞いてきた。
「えっと…仕事をいただけないかと思いまして」
私がそう言うと信長様はちらりとこちらを見て言った。
「貴様、役目が欲しいのか」
「はい!」
私は元気よく返事をした。
すると信長様が机らしき物の反対側に座るよう指で示した。
「…では、役目を与えてやろう。座れ」
何を任せてもらえるんだろう?
すこし心配になりながら私はそろりと座った。
「お、お邪魔します」
私が座るや否や信長様は手に持っていた棒みたいなもので地図を指した。
「今俺が布陣しているのが此処、愚か者の城が此処だ。地形は図にかいてある」
「はい」
いったい信長様は私に何をさせる気なんだろうか?
気になりながらも地図に目を向ける。
「貴様はどう攻めたらいいと思うか」
「へ?!」