第1章 出会い
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水無月に入り、雨がやまぬ昼下がりの安土城の天守にて、二人の男が話していた。
「信長様、明日の本能寺での茶会の件ですが、ご要望通り共の人数は最少に致しました」
「ふん、貴様の最少は信じぬわ。…何人だ」
「俺を含めまして30名程です」
「…多い。減らせ」
「信長様。お言葉ですが茶会故、失礼のないようにこちらも調えておく必要があるのは存じ上げていらっしゃるかと」
「…好きにしろ」
「はっ」
此処、安土城天守閣はその眺めを信長が気に入り、豪奢で巨大なものに作りかえさせて自身の部屋として使われている。
話しているのは脇息にもたれ掛かりながら案件をこなしている信長と書状と共に内々の決定事項を告げに来た秀吉である。
「して猿よ」
「何でございましょう」
「金平糖を持って来い」
「信長様、本日の分はもう召し上がりました」
「知らぬ」
「お身体に障ります故」
「…」
ふう、とため息をつき秀吉が言った。
「明日はいつもより多く差し上げます故」
「ゆめゆめ忘れるでないぞ、猿」
「承知」
では明日の支度をしてまいります、と言って秀吉は天守を下がった。
やはり外は雨が降っていた。
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